パリの休日で、アンティークな世界を味わえる三つの美術館

十九世紀のクラシカルな空間を体験する。

パリに来たら、クラシカルでアンティークな世界に憧れる人も多いでしょう。

重厚な正統派の家具、洗練された芸術、美しい装飾のファッション、美味な紅茶やお菓子…..

そして、十九世紀のパリは、実は文化が花開いた時代でもあります。

産業革命と都市開発により、今のパリに近い姿が完成したのもこの時代です。

私は十九世紀のフランス、そしてパリに憧れる人間の一人です。

当時の文化、芸術、社会の変化の目まぐるしさ、
そして当時の人々の生活や思考の深さには、感嘆するものが多いのです。

何よりも、十九世紀のパリには、素晴らしい芸術や文化が存在します。

今回ご紹介する美術館は、そんなパリの一面を感じ、新たな知識を得られる場所です。

Table of contents

    十九世紀のアパルトマンの上品な世界。

    La maison de Victor Hugo (ラ・メゾン・ド・ヴィクトル・ユゴー)は、パリを訪れたら是非行くべき場所です。La maison(ラ・メゾン)という単語が示すように、ここはかつての「ヴィクトル・ユゴーの家」でした。日本語で、『ヴィクトル・ユゴー記念館』と呼ばれるこの博物館は、フランス文学好きの間では知られた場所です。

    ユゴーは、フランス十九世紀を代表する文豪であり、彼の作品は、世界各地で映画化、舞台化、ミュージカル化されてきました。文学に馴染みのない方でも、あの『ノートルダムの鐘』や『レ・ミゼラブル』の作者と言えば、お分かりになるでしょうか。

    この記念館では、当時の住まいがそのまま再現されています。見目麗しい十九世紀の生活を彷彿させる装飾から、文豪がどのような環境で思考し、執筆活動に励み、芸術家、富裕層、権力者と交流をしていたのか、理解することができます。

    ユゴーの家具、芸術作品、美術品などのコレクションには圧巻されます。その中には、東洋に影響を受けたオリエンタリズムのようなインテリアも混じっています。彼はまさに、世界中の美しいものを集め、ひらめきを受けていたのです。

    そもそもユゴーは裕福な家の出身であり、十九世紀作家の自宅のうちでも、とても豪華な邸宅となっています。

    ここに来れば、彼の伝記を知るだけでなく、当時のブルジョアらしさのような雰囲気も味わえます。

    自宅前のヴォージュ広場は、今もフランスの富に憧れる人にとって、その名を知らぬ者はいません。十九世紀フランスの文化、芸術、富を感じたい方は、是非足を運んでみてください。

    芸術家の集う、知性あふれるサロンの雰囲気を味わう。

    ※現在2026年3月まで改修工事のため、閉鎖中。

    もう一箇所ご紹介したいのが、モンマルトルの丘のふもとに所在する、「ロマン主義博物館」Musée de la vie Romantique(ミュゼ・ドゥ・ラ・ヴィ・ロマンティック) です。La vie(ラ・ヴィ)とは、仏語で人生の意。ここは、元々オランダから移り住んだ、アリ・シェーファAry Shefferという画家の自宅でした。

    特筆すべきは、アトリエかつサロンとして利用していた邸宅内の家具や調度品です。十九世紀の雰囲気を再現するような室内には、沢山の絵画が飾られています。

    かつて、ショパン、ドラクロワ、リスト、ディッケンス、ロッシー二、ツルゲネーフなどの名だたる芸術家が集いました。

    二十世紀半ばに政府に美術館として買収されるまで、常に継承され、パリのサロンとして発展したのです。ここを訪れると、当時の「サロン文化」が身に染みて感じられます。

     

    上品で清楚なフランス家具を好む方から見ても、とてもフォトジェニックな美術館です。映画、小説、絵画で見た、想像のパリと思っていたような……芸術性ある世界を味わえます。

    シックな地区にある、ドラマティックな画家のアトリエ。

    最後にご案内したのが、印象派絵画の画家、ギュスターヴ・モロー美術館です。

    パリの9区という、これまたスノッブで洒落たパリジャンの間で話題の地区に位置します。

    モローといえば、『出現』という作品がとても有名です。

    この絵画は、聖書の中の、妖艶な踊りと引き換えに、「洗礼者ヨハネ」の首を要求したヘロデ王の逸話に基づいています。

    左には、サロメという踊り子。右には、洗礼者ヨハネの首が、黄金の光に囲まれて、宙に浮かんでいます。

    モローの最大の特徴は、神話や宗教に影響を受けた、ミステリアスな世界観です。多くの印象派の画家達は、自然などの現実を描写しました。しかし彼は、内面から湧き出るひらめきをキャンパス上で表現しています。だからでしょうか、彼の作品はミケランジェロやダ・ヴィンチなど、多様な存在の影響を受けているのです。

     

    この美術館は、彼の当時のアトリエをそのまま再現しています。
    画家がどのように制作に励んでいたのか……どのようにパトロンや他の芸術家をもてなしていたのか?
    十九世紀の芸術家の雰囲気がそのまま味わえる、美しい空間です。

     

    街、場所、芸術が一体化する、雰囲気ある休日を。

    私は美術館が好きですが、人が多い、もしくは大きなところだと、どうしても駆け足になってしまいます。本当に絵を知りたければ、何度も同じところに足を運ぶ必要があります。そして、どうせならばじっくり一枚一枚鑑賞したいものです。

    今回ご紹介したところは、小型の美術館であり、アクセスも良いのため、通いやすいです。

    建物と存在する地区自体がとても素敵なので、歩くだけで、パリの雰囲気が味わえます。芸術は頭で理解する側面もありながら、感じる要素も大きいです。

    私はパリでの散歩が好きで、ついでに美術館なども行きます。写真は18区。秋口は憂愁漂います。

    オルセーやルーブルも素敵ですが、とても大きくて回りきれない…..人が多すぎて緊張してしまう。そんな人にも自信を持っておすすめできる場所です。

    他にもパリには多くの美術館と博物館があります。

    「フランスの正統派なアンティークっぽい空間が好き」という方は、是非この三つの美術館を訪問してみてください!

    時期や時間によってはどうしても混雑してしまうため、事前にHPで確認をするのが最良です。

    !注意事項!

    ちなみに、2024年現在、各月の第一日曜日はパリ市内の美術館/博物館(一部除く)が無料で見学できることをご存知でしょうか。一方で、こうした無料の日(もしくは無料の美術館)に行くと、タイミングにより大混雑していることもあるため、本当に見学したいところはケチケチせず、チケットを購入することも、一つの解決策です。

    参考リンク

    Le Musée de Gustave Moreau(ギュスターヴ・モロー美術館) : 十九世紀の印象派画家、ギュスターヴ・モローのアトリエ。場所は九区。

    La Maison de Victor Hugo(ヴィクトル・ユゴー記念館):仏文学の誇る文豪ヴィクトル・ユゴーの邸宅。パリのマレ地区、ヴォージュ広場前に位置する。

    Le musée de la Vie Romantique(ロマン主義博物館) :

    かつてのアリ・シェーファーのアトリエ兼サロン。九区に位置。ロマン主義のサロンの雰囲気を味わえる博物館。