フランスが主題の美しい映画三選

世話がしい日常から逃れたい時……映画を鑑賞することで、ほっと一息つくような時間を過ごしませんか?

今回は、筆者が推薦する、最近のフランスを主題にした映画を三つほど集めてみました。
私は、映画の舞台背景や装飾が好きなのですが、今回ピックアップした映画は、まさにうっとりするようなセットばかりです!

現代に蘇る、フランスの美と芸術の世界を、紐解きます。

 

Table of contents

    オートクチュール Haute-couture (2021)


    フランス制作 / コメディ

    フランスの高級ファッションブランドDior「ディオール」のクチュリエ(仏語でお針子)達の最高責任者として、長年勤めてきた高齢の女性と、ある日道で偶然出逢った、貧しい移民の少女との、心温まる交流の物語。

    本作は、Diorというブランドの「現代における姿」を描いています。

    グローバルな時代における、高級衣類のあり方について、深く考えさせてくれます。舞台、背景、設定などは、フランスに住んだことある人ならば、「あるある」と言えるような展開ばかり。

    この映画の素晴らしいところは、仕事のストレスに悩むフランス人女性が、苦しい現実を生きる移民の少女との交流を通じて、人生における「オートクチュール」の意味を見出していることです。

    オートクチュールとは、フランスを支えてきた産業の一つです。多くの女性が、オートクチュール業界全体の発展により、「雇用」を得ることができました。単なる労働作業ではなく、フランスの伝統、歴史、製法を学習することにより、「お針子仕事」が誇り高いものであることを伝えてきたのです。

    そして、今この時代のパリでも、こうした精神を継承する美しさを伝える、そんな映画です。もちろん、所々出てくるDiorのアトリエの華やかさ、上品さ、繊細さは、美しい衣類の世界を愛する人にとって、癒しになること間違いなしです。

    ナポレオン Napoleon (2023)

    アメリカ合衆国 / 英国合同制作・戦争ドラマ

    英雄であり独裁者でもある男。フランス史の誇るカリスマでもあり、当時の欧州を軍事力で圧倒した人物です。本作はナポレオンの生涯を辿りながら、壮麗な背景、美術、セットで歴史を演出しています。

    個人的な意見として、ナポレオンの捉え方とは、大きく二つあると考えています。祖国、フランスの視点。もしくは、敵国の視点。

    本作は、米国制作だからでしょうか……フランス側の視点というよりも、むしろ敵だった英国の視点が重視されすぎているのが、若干残念です。確かに、政治や歴史において敗北や欠点はつきものですが……それにしても、革命後の混乱に揺れるフランスにあれ程の領土を与えた軍人なのだから、もっと圧倒性のある才があったのではないのだろうか?よりフランスの愛国主義性ある観点も交えて制作した方が、ナポレオンの影響力を理解できたのではないかと考えます。

    しかし、本作は英国の世界(及び英国に同盟している陣営)にとってナポレオンをどのように考えている(考えたい!)のかを把握するには、素晴らしい作品です。

    もう一つの見所は、うっとりするようなナポレオンの時代の美術品や衣服の数々。十九世紀前半の動乱の世紀は、まさにフランス美術史においても、華が開いた時代でもあります。スクリーンの中の華麗なるナポレオンの時代のフランス美術の世界を味わってください。

    『モンテ・クリスト伯』 Le Comte de Monte-Cristo ( 2024 )

    フランス制作 / 歴史アドベンチャー

    かの、有名な文豪アレクサンドル・デュマによる歴史小説が原作。日本では、『巌窟王』の名でも知られています。十九世紀の、冨と権力が蠢くフランスにおいて繰り広げられる、残忍な復讐の物語です。

    主人公は元々船乗りとして、南仏の港町で働きながら、政変や周囲の人間の傲慢な利己主義の思惑に巻き込まれて、投獄されます。
    数十年後、彼は脱獄に成功し、社会に戻るもの、家族と全財産を奪われ、戻る場所がないことに気づきます。権力と富のためならば手段を厭わない、人の冷酷さを教えると同時に、復讐や赦しなどの、人生の意味を問いただせる、そんな深い物語です。

    さて、小説を映画化するにおいて、常に台本の省略化と原作のメッセージ性の改変は課題です。簡単にいうと、そもそも映像とは、主観しか伝えられないツールなのです。
    一つのレンズを通して世界を覗き、複数のシーンが繋がり、カメラのアングルがあり、キャスティング、音楽などの効果音……複数の観点から、造り手の「思惑」しか反映されないのは事実です。

    その反面、小説は文字ですから、より淡々として距離感を作ることもできますし、感情も省けます。映画は実に監督の主観性しかありません。

    だからこそ、映画から受け取るメッセージと、小説から受け取るメッセージは異なるのです。

    そして本作は、原作は長編小説でありながらそれを上手にまとめていると感じます。

    現実に疲れた時は、映画で華やかな気分になりましょう!

    映画鑑賞は他国の新たな一面を知るきっかけです。フランスは、伝統、文化、芸術を育んだ歴史が、奥深い物語を生み出す土壌となっています。フランスが主題の映画を通じて、人生を照らす新しいアイデアを探してみてください。