B2Bクリエイティブコンテンツで成果を可視化する
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序章:クリエイティブなコンテンツマーケティングの成果をどうやって計測するのか?
優れたコンテンツマーケティング戦略を練るにあたって……クリエイティブなコンテンツマーケティングを目指していながらも、こうした路線の戦略における「成果の可視化」を難しく感じたことはありませんか?
クリエイティブと数値化は、まるで相反する課題のように思えますよね。今回の記事では、そんな悩みを抱えるマーケターの手助けになりたくて、解決のヒントを探りました。
第一章:可視化できる成果
マーケティングの課題:成果の測定と解釈
あなたがマーケターとして、会議で代表や他の部署の役員から「マーケティングの成果はどうなっている?」と聞かれたことはありますか?
そんな時、どう回答しますか?
多くのマーケターが悩む共通の課題が「マーケティング成果の可視化」です。
CMOやマネージャー、新人マーケターであっても、一度はこの課題に直面したことがあるでしょう。
しかし、マーケティング成果を数値だけで表すのは難しいものです
マーケティングとは、顧客候補の心理を動かし、納得させるための行為でもあります。例えば、ページビューやユニークユーザー数、コンバージョン率だけでは語れない部分もあります。特に、マーケティングを最近導入した企業では、マーケティング自体への理解が浅いことも少なくありません。
営業、マーケティング、カスタマーサクセスなどの部署間連携が難しく、マーケティング部門は独自の作業に偏りがちです。KGIやKPIの共有、数値設定の背景や理由が理解されにくい状況に陥ることがあります。
でも成果の可視化は必要ですよね?
定量評価と定性評価
ビジネスにおいて、数値は絶対重要!
確かに、数値にこだわるのは自然であり、必然です。しかし、数値から全てを理解、説明、実施するのは難しい場合もあります。安易に数値を設定する前に、「数値化」の目的や意味を一度整理すべきです。
そもそもなぜ数値化が必要なのでしょう?
原点に戻りましょう。
数値化とは、具体的な「可視化の手法」です。ビジネスでは、「行動や成果の達成度」を確認するために数値を使用します。
営業の成果は数値化しやすいですが、マーケティングの成果は数値化しにくいというイメージがありまんか?なぜでしょう?
それは、マーケティングが単なる行動の積み重ねだけでなく、品質とのバランスも重視されるからです。実際、営業でも各アクションの品質を評価することが重要です。
質の評価も重要。
戦略によっては、品質の査定が成果に直結することもあります。定量性と定質性という言葉をご存知の読者も多いかもしれません。マーケティングにおいても、品質の測定が重要である理由は、マーケティングの本質にあります。
マーケティングの本質を見つめ直す
数値化とマーケティングのプロセス選び
前段では、数値化やプロセスなどの選択をするフェーズにおいて、「闇雲に行動するのではなく、まず数値化の意味」を理解する大切さを説いてきました。
数値化やプロセスは重要です。そして、マーケティングの本質を再考すれば、数値化や最適なプロセスを経て、より優れた成果の創出が可能になります。
ただ、ここでマーケティングの本来の意味や目的を把握せず、焦って数値に走ってばかりいると、的外れな成果になってしまいます。
マーケティング理論の目的:顧客関係構築
かの有名な経営学者、ピーター・ドラッカーの言葉を借りるなら、「マーケティングの目的は、販売を不要にすること」です。つまり、マーケティングを通じて顧客に商品の価値を伝え、販売活動が不要になるほどに訴求力を高めることが目標です。
言い換えれば、マーケティングは顧客との繋がりを持ち続けることです。定期的に情報を発信し、サービスの価値を常に伝え続けることが求められます。
そして、マーケティングと営業が生み出す合わせ業
そのために、さまざまな媒体や手法を活用します。営業は、まるでマーケターが温めた卵を、一瞬で孵すために集中するプレスパワーのようなものです。このように、マーケティングは単に数値で表されるものではなく、顧客との繋がりを大切にし、長期的な視点でその効果を見つめることが重要です。
第二章:数値評価の先にある、インスピレーションによる結果
自社の戦略に適した指標を選べ
マーケティングの成果をどのように計測すべきでしょうか?
無論、マーケティングにおいて、数値を無視することはできません。一方で、ただ数値を追いかけるのではなく、その数値の意味を理解し、意図を設定することが大切です。
経営において数値は避けられない存在です。数値を上手に活用し、サイクルを進める必要があります。
まずは「意味のある」、マーケティング指標をおさえる
マーケティング指標としても、計測すべきものはいくつかあります。
たとえば、顧客獲得単価(CPA)で費用対効果を測ったり、Webサイトのトラフィックや直帰率でコンテンツの効果を確認したりすることが必要です。
流入数や顧客獲得単価が低ければ成功というわけではありません。
そこで、自社の経営戦略と照らし合わせましょう。
流入数は増えているけれど、流入した顧客候補の数と比較して、営業の成約率はいくつか?
また、低い顧客単価で獲得している顧客は、自社の理想のペルソナに近いか?彼らのLTV(顧客生涯価値)はどのくらいのものであるか?アップセルやクロスセルをしやすいか?
個別の指標が、全体を知るためのヒント
一つ一つのマーケティング指標は、大きなマーケティングという川がどのように流れているのかを理解するヒントをくれます。
マーケティングでは全体の流れを俯瞰することが実に重要です。戦略を立てる際には、現場の具体的な視点と事業全体を俯瞰する抽象的な視点を行き来する必要があります。
更に、数値の変動を単に報告するだけでなく、変動が発生した理由を推測して説明し、複数の数値や現状を基に仮説を立てることです。
インスピレーションと共に得られる結果を追い続ける
マーケティングの成果について熟考すると、思考は止まりません
私が良く聴いている米国のB2BGrowthというPodcastで、「マーケティングの成果の可視化」についてこのような言及がありました。
マーケティングの成功とは、「この人と仕事をしたい」と思わせること。
あるいは、「この人となら圧倒的な成果が出せる、今すぐ発注したい」と感じさせることです。
論理で相手を納得させることも大切ではありますもの、「一緒に仕事をしたい」と思わせるには、「感情面におけるアプローチ」も重要です。だからこそ、理屈とエモーション、両方の属性に訴求できるコンテンツ戦略は有効です。
コンテンツはメッセージ
コンテンツとは、リード(顧客候補)と製品/サービスの提供者との間における、意思疎通の手段です。
コンテンツによるコミュニケーションは、伝える力(コンテンツ自体の持つ効果)、手段や媒体(どのように伝えるか)、内容(何を伝えるか)の三つの軸で構成されています。
自社サービスを起点に、外界に向けて様々な発信を実践していく。逆に、外部のインサイトやデータを収集することにより、マーケティング戦略を構築することもできます。
競合との差別化や、自社の独自性・メリットを強調し、経営者の情熱やビジョンを明確に伝える必要があります。同時に、ユーザーのニーズやカスタマージャーニーを理解し、フィードバックに対応することも重要です。
ユーザー視点の導入
コンテンツは、「リードに提供された情報」であり、「リードとの対話」でもあります。
戦略性あるユーザー目線を取り入れた内容にすることにより、コンテンツのもたらす効果を最大化できます。つまり、ユーザーのリアクション、フィードバック、潜在需要などを分析し、コンテンツの作成に活かすことです。
こうした過程に、顧客の行動や心理の分析などの有益性が見受けます。
顧客が「望む」、もしくは「予想もしていなかったけれど役立つ情報を発信し続ける」コンテンツは、中長期でフォローされやすいでしょう。
目標は、こうした顧客がコンテンツをフォローする過程で「購買意思」をかためてくれることです。
主観性:エモーショナルやクリエイティブの役目
統計ベースの「顧客分析」の限界
もちろん、顧客の心を掴むには、時として統計に基づいたコンテンツを作成するばかりでなく、発想やアート性を元に、「顧客を感動させる」演出も有効です。プロダクト/サービスオーナー側の、「思考」や伝えたい「価値」をメッセージとして織り込むべきです。
一貫した「メッセージ性」を取り入れることは、初期段階から重要です。日本では「ブランディング」や「デザイン」目線などが、「アパレル」や「ライフスタイル」のtoCプロダクトのものという思考が支配し、toBや多くの業界でまだ欠如しているように見受けます。ですが、海外ではSaaSや難解な業界でも、「ブランディング」をうまく取り入れています。
プロダクトオーナーの想いから生まれる
というのも、最初から顧客分析に集中してしまうと、「顧客からしかコンテンツアイデアが生まれない」仕組みができてしまいます。「顧客を大切にする」日本文化だからこそ、ありがちな事例です。そして度々、UI/UXの領域でも類似したような問題が指摘されます。「顧客の意見」を中心にプロダクトのUI/UX改善が進みます。
顧客を大切に思いやるのは素晴らしいものですが、「顧客主導」と「オーナー主導」の調和が重要であると考えています。
日本では、「お客様は宝」という表現が存在します。こうした背景もあり、顧客の統計を軸に判断は進みがちなものです。しかし、私の仮説は、こうしたアプローチが「最良」ではない、ことです。
その一に、お客様からいただけるデータには限界があること。
その二に、「顧客主導」はあくまでも一つのヒントを指し示す手段であり、現実の事業は「オーナー」の「主体性」により導かれるからです。
特にブランディングの領域では、「プロダクトオーナーが何を成し遂げたいか?」を強く説明する必要があります。あくまでも、「プロダクトオーナーの思考」がプロダクトにおける価値や方向性を一貫して定めています。
闇雲なコンテンツ作成を避ける薦め
アーリーステージのスタートアップ、リソースの限られた会社、マーケティングを始めたばかりの会社が陥りがちな罠が:「とりあえず何かを作成し、発信すれば当たる」という発想です。
なぜ、これを避けるべきなのでしょうか?主な理由は下記です:
1. マーケティングは「継続」が鍵ではありますが、なんとなくの継続では成果が出にくいものです。「思考」し、「改善」を推し進め「継続」や「巻き込み力」が必要であり、意外と力とコミットメントがいるものです。
2. また、既存社員が他業務と並行して担当になる事例が多いです。他の仕事と並行になり、個人の得意不得意もある最中、適切な人材配置の見極めや評価をいきなり実践するのも難しいです。ガッツで成し遂げても、マーケティングの作業が属人化し、組織に仕組みとしては定着しません。中長期で見据えると、効率が悪くもなります。
3. マーケティングの役目は、経営における刃とも呼べる、他社との差別化にもあります。大変重要であり、自社サービスの展開における重要課題を担い、尚且つ経営陣とのコミュニケーションも非常に求められます。
マーケティングを「簡易な宣伝」と捉えていた方々には、少々驚きかもしれません。しかし、マーケティングで「成果を出す」ことは思考と戦略と実行によるシステム化が必要不可欠です。この記事が、考えるきっかけとなればいいと存じます。
結論:内容も優れたコンテンツによる持続可能な結果
クリエイティブコンテンツマーケティングは、実に複雑なのです。
今回の記事は長くなりましたもの、私が伝えたかったのは、「コンテンツマーケティングにおける優良な成果輩出」のために、何を考慮すれば良いのか?です。
数値化においては、KPIを基準にした測定は重要であるもの、マーケティングの本質を考慮し、自社の戦略や状況という背景設定の中で、意図のあるKPIを設定すべきです。
また、真に質の高いコンテンツは、常に投資が必要になります。「顧客視点」と「プロダクトオーナーの意思」、そこにコンテンツマーケターの感性をうまく融合させることが大切になります。
私は、数値評価と並行して、コンテンツの品質をしっかりと評価する仕組みを日本でも導入していくべきだと感じています。
それは、営業が「このコンテンツは良かった」と顧客からフィードバックを受けることや、コンテンツに関する簡易サーベイを実施すること、またはコンテンツの品質が業界で話題になるような状況を作り出すことかもしれません。
このように、コンテンツの優良さが、再訪問者数(Returning Visitors)や顧客化しそうなリードの増加に繋がるように、マーケティング戦略を練ることが求められます。